霊長類ヒト科動物図鑑

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    向田邦子 私はとにかくモテないことにすごく悩んでいた。小、中、高校と本当にモテなくて、それは勉強ができないということよりも重大な問題だった。勉強はある程度努力すれば結果がでる。しかしモテるための人間的な魅力というのは努力したからといって出るもんでもないからだ。いくら容姿端麗でも、それがないと人の心は離れていく…ということに気付いたのは、恥ずかしいことだがごく最近のこと。そら、モテない街道まっしぐらやったよなと今ごろ反省する。そもそも、モテることに執着していること自体がすでにダメなんですが…。

     向田邦子さんは、そんな私が憧れる女性の1人でもある。好奇心旺盛で食べることが大好き、でも1本筋の通った人が日常の些細な出来事を見れば、こんなに楽しくてみずみずしく見えるんだろうな、というのが読んでいるとよくわかる。ただ「ヒコーキ」というエッセイを、奇しくも飛行機墜落事故で亡くなってしまった向田さんが書いているのはちょっと皮肉に思えて、切なくなる。

     前述した話しを男友達にすると、「確かに、これといって美人でもないけども常に彼氏がいたり、なんか知らんけど魅力を感じる女の子はおるなあ。それって勉強して身に付くもんちゃうからなあ。なるほどなあ」と変に感心されてしまった。
     この会話をした後で改めてこの本を読むと、向田さんはきっと彼のいう「なんか魅力のある女の子」だったんだろうなと思える。
     なんか知らんけど、そんな感じがする。


          
          
         
      
          

    路面電車とチーズケーキ

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      ゲントウキスリーピースバンド「ゲントウキ」の6曲入りミニアルバム。
       インストの1曲目の後半から聞こえる「松虫通り〜」というコ−ラスににんまり。ほかにも「聖天さん」「チーズケーキ」、そして私がいつも聞いている路面電車の通り過ぎる音も入っている。
      そう。これは私の住む大阪・西成の天下茶屋界隈のことをモチーフにした歌なのだ。ちなみに「チーズケーキ」とは、りくろーおじさんのチーズケーキのことで、大阪市営地下鉄・岸里駅近くに本店がある。

       天下茶屋というところは、大阪でも数少ない下町情緒が残る場所だ。駄菓子屋には小学生がたむろし、町内会もあれば回覧板も回ってくる。商店街には朝早くから自転車にのったおじいちゃん、おばあちゃんが路面電車のようにゆるやかに走る姿が見られる。日曜日には、駅前のデイリーカナートには家族連れが多く、その前のケンタッキー、ミスドは満杯。
       この町の隅々に「家族」という生活感が漂っている。それが私にはものすごくほっとできるのだ。暖かみというのはこういうことを言うのかもしれない。このミニアルバムには、その暖かみが詰まっている。

       ボーカル、田中潤が青春時代を過ごした街でもあるとかで、思い入れは深い。まだここで4年ほどしか過ごしていないけど、いつでもこのアルバムを聞けばここでの生活を思い出ことができるのがうれしい。
       彼もきっと同じ気持ちなんじゃないだろうか。


            
            
           
        
            

      ナイフ

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        ナイフ 重松清の短編集。
         5編の主人公らはいじめにあっている、またはそれを傍観している立場にある。どれもが両者の苦しさ、やりきれなさを残酷なぐらい書ききっている。
         「ワニとハブとひょうたん池で」を読んで、自分も中学のとき同じようないじめにあったことを思い出した。標的にされるのも突然で、終わりがくるのも突然。たまたま投げられた石に当たってしまうぐらいの確率で「いじめられっ子」になってしまう皮肉さ。親や先生に言うとなんとなくヤバいし、チクったという事実が今よりもいじめはもっとひどくなるんじゃないかという危機感。そしてその行動をしてしまった自分のみじめさが嫌になる。逃げ場のない教室の中では、ひたすら耐えるということしか方法を思いつかなかった。
         でも、主人公らはひたむきにふんばっている。前をむいて歩いている。「エビスくん」は51番その姿が強く現れている。一生懸命な姿に「もうええやんか」と声をかけてあげたい。それでも最後までくじけずまっすぐで純粋な姿に胸がいっぱいになる。

         どの物語のラストも、暖かさをほんのりとふくんだ感じがある。そして言葉の1つ1つの中に「前を向いていけば大丈夫。自分を信じて」という著者からのメッセージがいっぱいつめこまれている。
        私が中学生のときにこれを読んでいたら、もうちょっと前向きにあの頃を過ごせていたかもしれない。


              
              

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