アシュラ

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    アシュラ
     

    ※ネタバレ注意※


     発売したのは1970年代。その当時に不買運動が起こってしまったというジョージ秋山のマンガが復刻された。
     中世の日本。大飢饉に見舞われた村で人肉を食べて生きのびてきた女性が男の子を産む。その子もまた、当たり前のように人を殺しては肉を食べて生きる。数年後、豊かな田園を耕し暮らす村の人々は彼の行動を極悪非道だとののしり、怒った。なぜ文句を言われるのかわからない幼い彼。気が狂った母親は我が子を「アシュラ」と呼んだ。しかし、その村も数年後に水がひからび、田畑は痩せて食料飢饉に…。
     アシュラは成長していくにしたがって言葉を覚え、たくさんの悲しい体験からやさしさや慈悲、喜びなどを少し学び始め、自分の寂しさ苦しさを訴える。でも最終的に彼の中に残ったのは、自分を食べようとした母親の記憶と、憎しみと復讐だけしかなかった。

     「生きること」と「食べること」は人間の本能だ。
     そこに理性がくっついて社会が作られ、それに順応して生きる。アシュラはその理性の部分が全くない男の子。だから本能に忠実に従って行動して生きていくしかない。
     本能に忠実に生きることは間違っていない。動物はみんなそうだから。
     ただ人間は、本能だけでは、今の社会では生きていけない。
     そんなあたりまえだと思っていることをこのマンガは完璧に覆す。
     だから今読んでも衝撃はかなり高い。
     
     どっちが幸せなんだろう。
     「本能のまま生きること」と「理性をもって生きること」。
     そんなことを考えさせられてしまう。


          
          
         
      
          

    ハピネス

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      ハピネス


      ※ネタバレ注意※


      ガロ出身の漫画家、古屋兎丸の短編集。


       悪魔に恋する女子高生「あくまのうた」、一途に雲を信じて生きる女の子爐◆爾鍬瓩諒語「雲のへや」、幼なじみ男の子2人の恋と友情「インディゴエレジィ」など含め8話の主人公たちは素直で、自分の好きなことに正直で従順だ。だからそれしか見えず、それを利用しようとする、さえぎろうとする人たちに翻弄される。
       騙されてもけなされてもバカにされても、信じたものを胸に大事に抱えて立ち上がり前を歩く姿は、見ているこっちが切なくて苦しくなってしまう。だから読み終わった直後は、もう読めないなと思った。
       
       でもよく考えてみると、本当は「まぶしくてうらやましい」から読みたくないと思ったのが本心かもしれない。いつのまにか好きなことを信じること、それを信じる自分もあきらめていく。情けない状況を私は認めてしまっているのが嫌でもわかってしまうから。
       でも確かに、主人公らのような時間を生きたはずだ。
       「見栄」におびえたり、「世間」「常識」といわれるものにぶつかってケガをして、嫌になって悔しい思いをしても笑っていけたことがあったはずだ。

       これからもきっと何回もこの本を読んでしまう。
       青臭くて、純粋に「好き」な何かを信じていた自分がいたことを忘れないように。それを今の自分の中にもう一度その気持ちを大事にさせるために。

            
            
           
        
            

      事件の核心

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        事件の核心

        このタイトルなのに、オビには「二十世紀最高の恋愛小説」と書かれている。
         物語は、戦中の西アフリカの植民地で警察副所長を務める男が、妻のほかに若い女性と恋に落ちて三角関係になってしまう。これだけ読むと、ただの不倫話かー、と思うが(私も本の裏に書かれてある説明を読んでそう思い、買った)他の恋愛小説と違うのは、男がクリスチャンであること。だから普通の人以上に男は延々と苦しんで悲しむ。
          
         532ページ以上にわたって書かれている大半は男の葛藤、苦悩なのだがクリスチャンではない私にとっては「深刻に考えんでも…」と思ってしまう。しかし、命をかけてまで信じるものがあることはすごいことで、自分にはそれがあるかと言われたら何ないことも問題なのかなと思ってしまう。著者、グレアム・グリーン自身も敬虔なクリスチャンだからこそ、無視することはできない重大なテーマなのだ。
         
         結局、男は女への愛と神への愛との板ばさみに悩み、両方を断ち切ることができないまま答えを探し出すが、それはとても賢いとはいえない選択だった。それでも選んでしまうほど男の人生を狂わせたのは、2人の女性ではなく神の存在にほかならない。妻と永遠の愛を誓った神を裏切ることはできない。
         その神様でさえも恋愛感情をおさえることはできないと思うと、人間はバカだと思うけど、そこが人間しかない個性なんだろうなとも納得するしかない。
         
         そういう人間の構造も、もしかしたら神が仕組んだことなのかもしれない。だとしたら皮肉だ。

              
              

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