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 夜と霧

私が手にとったこの本は、初版から43刷目にあたるものでした。
以前からずっと読んでみたいと思っていた名著。
ちびちび、でもしっかり内容を咀嚼しながら読み進め、最後のページを閉じたのは8月9日。
長崎に原爆が投下されて68年目の日でした。

アウシュビッツを経験し、無事に生還した心理学者の実体験に基づいたこの作品。
後半はこの作者が強制収容所を通し、人間が極限状態に陥ったときの状況を、学者らしく、また生生しく記しています。

ただ、これを読む前に72ページにも渡る「解説」をまずじっくり読んでほしい。
実際にアウシュビッツをはじめ、ドイツ各地に点在する強制収容所で行われていた、残酷な現状をことこまかに書いている。読んでいても眉をしかめ、時には目を閉じてしまうような非道の限りが
この強制収容所で行われていたのです。

この状況下で、作者は生きのび、そして多くの同じ環境下で生きる人たちをみていたのです。
この事実に驚き、そして作者の最後まで「人間としての何か」を失うことなく生きていたということに
ただただ尊敬するばかりです。


戦争はよくない。
これは誰もがわかっていることです。

では、なぜいけないのか。
戦争がもたらすものは一体何なのか。
戦争で失うものは何なのか。


この本の中に、これらの問いの答えになるものがたくさんあります。

 死のロングウォーク

*ネタバレ注意


小説「バトル・ロワイアル」(高見広春・著)映画化が決定した頃、本屋でこの映画の関連本の1冊として平積みされていた。気になるなーと思いながらもそのときは買わずじまいで、実家に戻ったときに近所の大型古本屋でこれを見つけました。


 14-16歳の少年100人が最後の1人になるまでひたすら歩くという「ロングウォーク。
 ルールは、立ち止まったりすると見張り役の軍人から警告を受け、それが3回になると殺される。
 前述の本屋は、この不条理さがバトルロワイアルの設定と似ているから関連本として紹介したと思いますが、違う点は、軍が徹底した支配力を持っていて、参加者は武器もなく、反抗すらできない立場に置かれているということ。
 さらに参加者は自ら希望していて、相手が反撃しなくても1秒ごとに参加者の体力は確実に失われていくという過酷な環境。

 参加者の間では時間が経つごとに友情も生まれ、そして励まし会う姿も出てきます。
 その様子はまるで人生の縮図のよう。日々ただ前進しているだけなのに、ふりかかってくるやっかいごと…会社でのしがらみ、恋人、友情、結婚、身内・自分の問題など…に対応している姿に見えてくるるのです。

 倒れたときは、まさに死ぬとき。
 特に死にぎわの描写はその人の性格がにじみ出ています。

 物語の大半は参加者の会話、回想で、それだけで登場人物の個性を引き出しているのはさすがですが、体力が奪われていく人の思考を書いているのがこの本の一番のポイントではないかと思います。自身が疲れたときにどういう状態になり何を思うかなんてわからない。やけくそになるのか、それとも消極的になるのか、または怒るのか…。

 解説によると、この作品は大学1年の時に「リチャード・バックマン」名義で書かれたそうだ。
 こんなときからキングが人間の恐怖や苦痛というものを知っていたこともすごいし、怖い。

マイバックページ 

東大安田講堂事件、三島由紀夫の切腹自殺―
全共闘運動もかげりをみせはじめたころ、かけだしの記者と運動に没頭する男が出会う。
お互いに何かに「怒り」、何かをなしとげたいと考えている二人。
この曖昧な「何かをしたい」という思いは、
映画の舞台となった時代の人たちはみんな抱えていたんではないだろうかと思います。

それゆえに疾走し、傷つき、裏切り、だます。
身体の底からわきあがる、沸騰するような高揚感を求めて、さらにそれ以上の高まりを
追いかけていく。

しかしたどり着いた、そのあっけない終焉。
祭りの後のような脱力感の中で何を思い、考え、感じるのか。

手に残ったものは何なのか。


見ている人たちの中にある、そのような「あの頃」の刹那を思い出し、
胸を締め付けられる人は多かったはず。
私もその一人。


「中二病」というのがあるけれど、「青春病」というのもあるはず。
理想とスリルを追い求め、暴れて何かを失ってしまう。
山下敦弘監督は、そういった「青春病」をわずらった男性を描くのが非常に上手です。
不器用で、アホで、悲しくて、優しい。

この映画の宣伝では「僕たちは何を信じるのか」というような、重めのキャッチがうたわれていましたが、私からすると青春病の男の物語に見えます。

もしかすると、全共闘時代すべてが「青春病」だったのかもしれない。


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